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親子入院での入院目的と遂行度・満足度の報告 その2:-発達障がいをもつお子さんと保護者について- CiNiiでみる

著者名:
西部 寿人  和泉 裕斗  井上 和広  大澤 浩司 

抄録:

【はじめに、目的】

当センターの親子入院では、未就学児とその保護者が1か月間入院し、それぞれの目標を持ち短期集中的なリハビリを行っている。具体的には、医師の指示のもと「看護の生活指導」や、「小集団や全体での保育」、「社会制度や遊びや発達についての講義」、「個別のリハビリ」など集学的な多種職によるプログラムを実施している。今回、発達障がいも持つお子さんへの理学療法を含む短期集中リハビリにおける効果判定を、カナダ作業遂行測定(Canadian Occupational Performance Measure:以下COPM)を用いて実施し、「目標の傾向」と「遂行度と満足度の変化」を評価した。今回の研究において、効果判定としてのCOPMの妥当性を検証すること、ならびに親子入院の効果を定量化することを目的とした。

【方法】

 2017年10月から2018年3月の6か月間に、親子入院を行った58家族のうち、発達障がい(主な症状が知的障害、言語や情緒の課題)をもつお子さんの17家族を対象として、入院時と退院時に、PTがCOPMの評価を行った。COPMで挙がった目標を、国際生活機能分類ー小児版(ICF‐CY)によりコード分類した。そして、「心身機能/身体構造」、「参加活動」、「環境」にコード分類されたCOPMの目標について、コードごとの遂行度と満足度の変化率についても比較した。

【結果】

 対象疾患は、ダウン症候群6例、プラダーウィリー症候群2例、自閉症スペクトラム5例、言語発達地帯3例、その他1例の計17例であった。対象者の年齢は3才7か月±1才4か月(2~6才)であった。COPMで設定された目標は34項目で、筋力や巧緻性の向上などの「心身機能/身体構造」は9項目、移動や遊びやコミュニケーションの向上などの「参加」は20項目、母親のかかわりのスキルアップなどの「環境因子」は5項目であった。

 遂行度については30項目で向上し4項目で変化がなかった。満足度については、27項目で向上し5項目で変化がなく、2項目で低下していた。遂行度は10段階で2.6±1.9、満足度は3.2±2.7とともに向上していた。特に環境因子の項目で遂行度の向上が3.2±1.0、満足度の向上が5.6±2.1と向上の割合がより大きかった。

【結論】

COPMでの目標設定は、保護者の希望を記載している自己紹介用紙を基本にして、PTが面談の中で設定しているため、妥当性はあったと考える。環境因子の項目で遂行度と満足度が高かった事は、先行研究と類似しており妥当性を示す一つと考えられた。全体的に、発達障がいをもつお子さんがいるご家族において、親子入院による短期集中リハビリに対して、遂行度も満足度も向上は見られ、定量的な効果判定として有効であった。また、入院目標やその重要度について、多職種が明確に理解したうえで短期集中リハビリを実施できることは臨床的にも有用であった。

【倫理的配慮,説明と同意】

 研究にあたって対象者には、説明し同意を得たうえで評価を行った。評価結果とデータは入院中に目標を明確にするために利用することを口頭で説明した。またデータは、入研究報告で利用する際には、個人が特定されないように情報を取り扱うことを文書で説明した。なお、演題発表に関連し、開示すべきCOI関係にある企業などはない。


出版年月日:
2019 , 
巻:
46 , 
号:
0 , 
ページ:
J-85_2-J-85_2 , 
ISSN:

確率共鳴現象が運動の不器用さに与える即時効果:-一症例を通じた検討- CiNiiでみる

著者名:
信迫 悟志  大住 倫弘  松尾 篤  古川 恵美  嶋田 総太郎  中井 昭夫  森岡 周 

抄録:

【はじめに】運動の不器用さを主症状とする発達性協調運動障害(Developmental Coordination Disorder:DCD)では,視覚-運動統合が困難であり(Nobusako,2018),運動において視覚依存となりやすいこと(Biancotto,2011)が明らかにされている.確率共鳴(Stochastic Reasonance:SR)は,身体に感覚閾値未満のランダムな周波数ノイズを加えることにより,感覚入力や運動機能が改善する現象である(McDonnell & Abbott,2009).本研究では,DCD児一例に対してSRを付与し,その効果を調べた.

【方法】対象は,DCDの診断を有する男児(10歳,右利き)であった.ベースライン測定として,運動機能をDCD Questionnaire(DCDQ)とMovement-ABC2(M-ABC2),自閉症スペクトラム傾向をSocial Communication Questionnaire(SCQ),注意欠陥多動性傾向をADHD-Rating Scale-IV(ADHD-RS),抑うつ傾向をバールソン児童用抑うつ性尺度(DSRS-C)にて測定した.DCDQは29点,M-ABC2のPercentileは,微細運動機能が63,粗大運動機能とバランス機能が5,総合で9であった.SCQは9点,ADHD-RSのPercentileは,不注意が88,多動性-衝動性が84,合計で87,DSRS-Cは3点であった.SRの効果を調査するために,SRあり条件(SR(+))となし条件(SR(-))におけるM-ABC2の微細運動機能テスト,映像遅延検出課題,時間順序判断課題を実施した.SRは両手首に貼付した振動アクチュエーター(Sprinter α,日本電産セイミツ)によって提供された.映像遅延検出課題で測定される遅延検出閾値と遅延検出確率曲線の勾配を,視覚-運動統合機能の指標とした.視覚刺激と触覚刺激の時間順序判断課題の成績を,視覚依存傾向の指標とした.

【結果】SR(-)における微細運動機能テストの結果は,63percentileであったが,SR(+)においては,95percentileと向上を認めた.遅延検出閾値と確率曲線の勾配は,SR(-)(272.9msec,0.03)よりも,SR(+)(219.4msec,0.05)において,それぞれ短縮・増加し,SR(+)において視覚-運動統合機能が向上した.時間順序判断課題の視覚刺激と触覚刺激の同期条件において「視覚刺激が早い」と回答する割合は,SR(-)では90%であったが,SR(+)においては50%となり,SR(+)において視覚依存傾向が減少した.

【考察】SRの付与は,視覚-運動統合を促進し,視覚依存傾向を減少し,即時的に運動機能を向上することが示唆された.

【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,所属施設の研究倫理委員会で承認された後に,ヘルシンキ宣言に基づき,個人情報の管理には十分配慮して実施した.対象児とその保護者には,事前に本研究の目的,方法,参加期間,いつでも参加を撤回できること,不利益がないこと,プライバシーの保護,学会・論文における公表について,文書による説明を行い,署名による同意を得た.


出版年月日:
2019 , 
巻:
46 , 
号:
0 , 
ページ:
J-85_1-J-85_1 , 
ISSN:

自閉症スペクトラム児のバランス能力と不注意および多動ー衝動性の関係性 CiNiiでみる

著者名:
中根 征也  石倉 健二  杉本 圭  平川 正彦 

抄録:

【目的】自閉症スペクトラム児(以下,ASD児)について,バランスや巧緻運動に問題が存在するとの報告があり,適切な運動支援を行うには,運動能力を把握することが重要である。本研究の目的の一つ目は,ASD児と定型発達児(以下,TD児)の運動能力の違いを明らかにすることであるが,その中でも,静的・動的バランスの領域に着目する。

 また,DSM-5では,ASDと注意欠如・多動性障害(以下,ADHD)との併存が認められるようになった。さらに,ASDと診断された人の30-50%にADHDの症状が認められるとの報告もあり,ASDとADHD様の特性は密接な関係にある。ASD児の運動の特性と不注意および多動-衝動性の関連について明らかにすることを本研究の二つ目の目的とする。

【方法】

対象:医師よりASDの診断を受け,児童発達支援・放課後等デイサービス施設(以下,通所施設)に通う児10名(以下,ASD群 月齢:74.6±4.0ヶ月)とTD児10名(以下,TD群 月齢:77.2±3.7ヶ月)とした。対象児は,KIDS乳幼児発達スケールを用い,言語理解などの知的レベルに問題がないことを確認した。

 調査内容と手続き:Movement Assessment Battery for Children-2(以下,MABC-2)を用いて,片足バランス,つま先歩き,マット上ジャンプを実施した。片足バランスついては,成績がよい方をBest leg,悪い方をOther legとする。MABC-2の検査マニュアルに則り,結果を算出し,バランス項目の結果をASD群とTD群にわけ,t検定にて比較検討した。

 対象児のバランス能力と不注意および多動-衝動性との関連性を明らかにするため,ADHDの程度を評価するADHD Rating Scale-Ⅳ(以下,ADHD-RS)を用いて,ASD群については,通所施設での療育場面の様子を,TD群については家庭での様子を基に不注意・多動-衝動性・合計の3項目の得点を算出した。その上で,ASD群とTD群のMABC-2から得られたバランス能力の各項目の結果とADHD-RSの各算出された得点をSpearmanの順位相関係数を用いて検定した。

 すべての統計処理にはR3.3.3を使用し,有意水準は5%未満とした。

【結果】ASD児とTD児のバランス能力:ASD群とTD群で各バランス項目の結果を比較した結果,片足バランスでは,Best legとOther legの両項目で,また,つま先歩きについても有意差を認めた。しかし,マット上ジャンプに関しては,有意差を認めなかった。

 ASD児のバランス能力と不注意および多動-衝動性の関連性:ASD群において片足バランスのBest legとOther legの両方とつま先歩きについてADHD-RSのすべての得点との間で有意な負の相関を認めた。しかし,マット上ジャンプについては,ADHD-RSのすべての得点と相関は認められなかった。

【考察】ASD児への運動能力に着目した療育を積極的に行っていく必要があると考える。また,バランス能力と不注意および多動-衝動性の間に深い関係があるため,バランス能力へ着目した療育が,不注意および多動-衝動性へも効果を及ぼすかを検討する必要がある。

【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,森ノ宮医療大学の倫理審査委員会の承認を得て実施した(受付番号:2016-048)。また,対象児の保護者に対して研究内容を口頭と書面にて説明し,同意を得た。さらに,研究対象者のデータから氏名などの個人を識別できることとなる記述などを削り,代わりに新しく番号をつけて匿名化を行う研究対象者とのこの番号を結びつける対応表を作成し,個人情報管理は外部に漏れないように施錠できる場所で厳重に管理した.


出版年月日:
2019 , 
巻:
46 , 
号:
0 , 
ページ:
J-84_2-J-84_2 , 
ISSN:

身体表現性障害により歩行困難を呈した中学女児に対して認知行動療法が有効であった一症例 CiNiiでみる

著者名:
豊田 実紀 

抄録:

【はじめに】

 家庭環境における受容経験の乏しさにより歩行困難を呈した症例を経験した.本児は生活に適応できず,身体表現性障害と診断された症例で,今回認知行動療法を軸として介入することで治療効果を得られたので報告する.

【症例紹介】

 本児は家庭環境により受容される経験が乏しいことや,WISCより言語理解の弱さ・状況理解の弱さが指摘されている.介入5か月前より歩行困難となり当院入院となったが,1.5か月で松葉杖歩行が獲得されたため退院となった.しかし,退院後2.5か月後より再び歩行困難となったため当院に再入院しリハビリテーションを開始した.

【評価】

 入院時の身体機能は,はさみ脚・足部の尖足が強く,立位保持・独歩は不可であった.関節可動域は,股関節外旋(左:-5°,右:-5°),足関節背屈(左:0°,右:0°).下肢筋力は,MMT2.ADLは車椅子にて自立レベル.また,長期の松葉杖使用により歩行に対する恐怖心やボディーイメージの低下・協調運動低下・筋緊張のアンバランス等の二次的な身体機能の低下が生じていた.

 精神機能は,受容経験の乏しさや知的能力の偏りにより自他の感情や言語を上手く理解できず,表現をすることや状況を理解することを苦手とし,失敗することを強く恐れていた.そのため自己欲求に対する発言が乏しかった.加えて,歩けない状況を受容できていなかった.

【方法】

 受容経験を報酬として充分に与えながら認知行動療法を軸として介入を実施した.身体機能に対しては,歩けない状況を理解し受容していく中で,原因を共に分析し自己の身体が置かれている状況を整理しながら介入した.精神機能に対しては,受容体験を増やしていく中で,失敗しても良いことを理解していき,自他の感情を認識し自己表現をしながら介入した.

【結果】

 「心因性の病気なんだよね」「歩けるようになりたい」等,自らの病気と向き合う発言がみられ,介入1週間後に手引き歩行35m可能に,1か月後に独歩40m監視にて可能になった. 3.5か月後には不整地歩行や二重課題下での歩行も含めて独歩は自立し,階段昇降や走行・ジャンプ・ストップ動作も自立した.関節可動域も,股関節外旋(左:40°,右:40°),足関節背屈(左:10°,右:15°).下肢筋力も,MMT5.ADLは,再発に対する不安感が残存したため,独歩かT字杖にて歩行するレベルとなった.

 精神機能では,自らの欲求を積極的に表現できるようになり,様々な感情を表出できるようになった。

【考察】

 受容経験の乏しさにより身体表現性障害を呈した女児に対して,認知行動療法を実施することによって,歩行を再獲得することができた.身体機能のみでなく精神機能にも目を向けて,どのような支援が必要であるのかを適切に判断し,認知行動療法を軸として患児に合ったプログラムの再立案を繰り返して介入したことが有効であったのではないかと考える.

【倫理的配慮,説明と同意】

症例及び,家族には本発表の目的と意義について十分に説明し,同意を得た.


出版年月日:
2019 , 
巻:
46 , 
号:
0 , 
ページ:
J-83_2-J-83_2 , 
ISSN:

発達性協調運動障害児の膝関節伸展筋力測定の再現性:健常児との比較 CiNiiでみる

著者名:
萱原 康人  横井 裕一郎  矢倉 茜  井上 孝仁  堤 愛美  齋藤 友希  藤本 聖香 

抄録:

【はじめに】 発達性協調運動障害(Developmental Coordination Disorder: DCD)を伴う児の筋力は健常児よりも有意に低下していると報告されており、運動パフォーマンスの低下に影響する要因の一つである。また、関節運動が速いほど筋力が発揮しにくいことや主動筋と拮抗筋の同時収縮の割合が高いことなどから、常に一定の筋力を発揮できない可能性がある。そこで本研究の目的はDCD児を対象とし、ハンドヘルドダイナモメーター(Hand-Held Dynamometer: HHD)を用いて膝関節伸展筋に対する筋力測定の再現性または筋力を健常児と比較して検討することとした。

【方法】 対象は当院外来リハビリに通院しているDCD児10名(月齢68.7±2.9ヵ月、男児7名、女児3名)の全20脚、札幌市近郊の幼稚園児26名(月齢70.5±3.3ヵ月、男児14名、女児12名)の全52脚であった。DCD児と健常児の筋力測定は異なる検者が実施した。筋力測定にはHHD(μTasF-1、アニマ社製、日本)を用いた。測定肢位は上肢を胸部で組んだ端座位とし、足底が床面に接地しないようにした。HHDの固定用ベルトを支柱と下腿軸が平行になるようにベルトを取り付け、測定者はセンサー部がずれないよう把持した。補助者は後方から大腿内側で対象者の殿部後方を固定し、手掌で腸骨稜を把持した。測定は1回の練習後に3回の本測定を行い、各測定間隔は30秒とした。運動様式は等尺性運動とし、最大値が3秒変化しない時点で測定を終了し、その数値を記録とした。筋力は最大値を使用した。筋力の単位は膝関節伸展モーメント体重比(Nm/kg)とし、センサー部の力(N)、モーメントアーム(m)と体重(kg)から算出した。モーメントアーム(m)は膝関節裂隙から外果5cm上方の距離とした。統計学的処理は測定値の再現性を検証するため級内相関係数(intraclass correlation coefficients: ICC)を使用し、筋力の健常児との比較、利き足・非利き足での比較を検討するため対応のあるt検定または対応のないt検定を使用した。有意水準は5%とした。

【結果】 DCD群の利き足ICCは0.95、非利き足ICCは0.96、健常児群の利き足ICCは0.90、0.85を示した。平均筋力はDCD群の利き足で1.37±0.40Nm/kg、非利き足で1.40±0.30Nm/kg、健常児群で利き足1.11±0.21Nm/kg、1.10±0.17Nm/kgを示した。DCD群と健常群の比較では利き足に有意な差を認めた(P=0.006)。DCD群と健常児群の非利き足、DCD群の利き足と非利き足の間に有意な差は認めなかった。

【考察】 DCD児の膝関節伸展筋群に対する筋力測定のICCは高い値を示した。また、本研究の対象となったDCD児は健常児より高い筋力、もしくは同等の筋力を示した。このことからDCD児に対してHHDを用いた信頼性のある筋力評価が可能であり、DCD児は単関節運動ならば一定の筋力を発揮できる可能性がある。DCD児に対する理学療法は、主にパフォーマンスの向上を目標とすべきであり、単関節運動よりも課題特異的な理学療法が効果的であると考えられる。

【倫理的配慮,説明と同意】 本研究は、ヘルシンキ宣言に基づき実施した。実験前の倫理的配慮として十分な予備実験を行い、設定した取り込み基準および除外基準を遵守して行った。また、対象者および保護者に対して本研究の内容について十分に説明を行い、同意を得た上で実施した。なお、対象者および保護者には実験のどの段階においても実験を拒否、中止する自由を保証した。本研究で得られたデータは測定後すぐに匿名化しID番号にて扱うこととした。また、本研究に関する文書やパーソナルコンピューターは研究実施者が施錠可能な部屋で厳重に管理した。


出版年月日:
2019 , 
巻:
46 , 
号:
0 , 
ページ:
J-84_1-J-84_1 , 
ISSN:

強い過敏性と繰り返す肺炎に難渋したCostello症候群の児に対する理学療法介入経過 CiNiiでみる

著者名:
續木 明希子  藤原 智子  松尾 剛  井上 智人  武知 淳美 

抄録:

【はじめに】Costello症候群は特異的顔貌,心疾患,精神遅滞等を示す遺伝性疾患である. 今回,出生から1歳半までの易過敏性と繰り返す肺炎に難渋したCostello症候群の児を担当した.呼吸管理,栄養管理,合併症等で入院が長期化し,2歳5か月で退院するまでの理学療法の経過を報告する.

【症例紹介】在胎36週0日,体重3440g,Apgar score1分5点/5分8点だった.出生後より挿管され日齢13に抜管し酸素投与していたが呼吸状態が悪化し日齢41より加湿加温高流量経鼻カニューレによる呼吸管理となった.合併症として肥大型心筋症,慢性呼吸不全等を認めている. 遺伝子検査によりCostello症候群と診断された.

【経過】出生後より筋緊張亢進と易過敏性が出現し,生後2か月に理学療法開始となった.初回評価では全身の筋緊張亢進による後弓反張姿勢や,上肢の不随意運動が見られ,安静保持が困難であった.ホールディングとポジショニングで落ち着くが,体動等で容易に筋緊張が亢進する状態だった.一般病棟に転棟後,在宅療養へ向けて支援を行っていたが,生後5か月に呼吸状態が悪化し再度挿管され,その後気管切開となった.同時に無気肺を発症し呼吸理学療法を開始した.その後も肺炎と無気肺を繰り返したため継続して行った.また,ウレタンで作製した椅子やベビーカーでの座位練習,おもちゃ等での感覚刺激を行い,易過敏性の軽減や刺激の受け入れ向上を促した.両親は本児への愛着形成は良好でリハビリテーションにも協力的であったため,体位排痰や発達練習を指導し日常的に実施してもらった.生後10か月より笑顔が見られ始め,おもちゃにも反応を示すようになった.1歳半からは呼吸状態が安定し,後弓反張姿勢が消失,さらには易過敏性の軽減もみられた.それに伴い刺激に対する反応や運動発達の急激な向上がみられた.退院までは主に運動発達練習を行った.現在,日中は人工鼻での酸素投与,夜間は人工呼吸器を使用し胃瘻による栄養管理をおこなっている.筋緊張は亢進し下肢は関節可動域制限を認める.運動発達は頚定,側臥位まで寝返り可能,腹臥位での頭部挙上が可能である.認知発達は「ハイ」「バイバイ」などのやり取りが可能で,笑顔が多く社交的である.

【考察】今回,Costello症候群の中でも重症度の高い症例を経験した.易過敏性や繰り返す無気肺により理学療法に難渋したが,1歳半以降は全身状態が安定し運動面,認知面の発達が進んだ. Costello症候群は乳児期は強い人見知りや過敏等が見られるが2歳頃から緩和すると言われている.全身状態の安定とCostello症候群特有の経過により本児の発達が進んだと考える.また,家族とともに行うことで日常の関わりの中にリハビリテーションを取り入れることができ,本児の発達の変化を共有することができた.

【倫理的配慮,説明と同意】今回の研究はヘルシンキ宣言に則り、研究の意義について文書と口頭で両親に説明し、同意を得た上で実施した。


出版年月日:
2019 , 
巻:
46 , 
号:
0 , 
ページ:
J-83_1-J-83_1 , 
ISSN:

急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に対して人工呼吸器管理、膜型人工心肺(ECMO)実施後、ICU関連筋力低下(ICU-AW)による筋力低下を呈した患児への理学療法経験 CiNiiでみる

著者名:
崎田 博之  瓦井 義広  脇田 媛加  陽川 沙季  田村 太資 

抄録:

【はじめに】

近年、集中治療室における超急性期のリハビリテーション(リハ)において、従来の廃用症候群とは異なった病態であるICU-AWに対するリハの有用性が注目されているが、小児分野、特に幼児においての報告は非常に少ない。今回、ARDS後にICU-AWと診断された患児の理学療法を経験する機会を得たので報告する。

【症例紹介】

2歳の男児。出生歴、発育歴は問題無し。感染を契機に嘔吐から誤嚥に至り、誤嚥性肺炎と診断。その後急速に病状悪化し、当院に緊急搬送され、ARDSと診断される。入院日より人工呼吸器管理、ECMO実施。入院15日目の神経伝導速度検査の結果、下肢末端側に振幅低下が認められ、軸索型神経障害の所見と長期間の重症管理が続いたことからICU-AWと診断される。

【経過】

入院初日~7日目までECMO実施。9日目に抜管し高流量酸素鼻カヌラ(HFNC)管理となり、同日から無気肺予防と、全身の筋力低下による運動障害に対して運動機能の向上を目的に理学療法を開始した。開始当初は全身の筋力低下が顕著で、ベッド上での自動運動は頭部回旋運動、手指・肘関節屈曲、膝関節屈曲、足関節底背屈が何とか可能なレベルであった。特徴的であったのが下肢において筋力低下が著しく、足関節底背屈以外はMMT1~2程度の筋力しか有していなかった。バギーを使用した座位練習より開始し、次いで床座位、椅座位、端座位と段階を上げていった。15日目にICUから一般病棟に転棟してからは病棟内のプレイルーム内で座位練習、及び立位練習を行った。16日目HFNC離脱してルームエアーとなり、18日目に自力での床座位保持が可能となった。この頃から下肢の自動運動が飛躍的に増え、股関節、膝関節の抗重力運動も盛んに認められるようになった。23日目よりリハ室にてバルーン等を使いながら立位、バランス練習を行い、下肢での体重支持を積極的に促した。また、練習の中では遊びの要素を入れながら飽きさせないように、かつ楽しんで立位、バランス練習を実施できるよう工夫しながらリハを進めた。30日目よりつかまり立ちを認め、39日目に独歩開始し、53日目に退院となった。退院時は手引き歩行で約50mの連続歩行が可能となった。また、退院時の神経伝導速度検査は上下肢共に正常範囲内であった。

【考察】

ICU-AWを発症した症例にどの程度の負荷量でどのようなトレーニングや運動療法が有効なのかはまだ確立されていない。幼児のような低年齢においては、自覚症状を他者に伝えることは困難であるので、本症例では病棟と母への聞き取りでリハ翌日の体調の変化や日中の様子を確認し、理学療法の負荷量と日々のプログラムを設定した。また、本症例において、全身の筋力低下に対するアプローチとともに、小児の理学療法の特徴を踏まえ、症例の発達段階と今後の運動発達を考慮したプログラムを展開した結果、退院時には手引き歩行及び短距離の独歩獲得することができたと考える。

【倫理的配慮,説明と同意】

ヘルシンキ宣言に基づき、患児の両親に本発表の主旨を説明し、同意を得た。


出版年月日:
2019 , 
巻:
46 , 
号:
0 , 
ページ:
J-82_1-J-82_1 , 
ISSN:

長期入院中に発達支援的介入を行ったCampomelic Dysplasiaの一例 CiNiiでみる

著者名:
内田 酉佳  長谷川 三希子  内尾 優  志真 奈緒子  大野 秀子  猪飼 哲夫 

抄録:

【はじめに】Campomelic Dysplasia(以下CD)とは、骨系統疾患の1つに含まれ、特徴的な骨異常を有し、多くは周産期に呼吸不全で死亡する予後不良な疾患である。呼吸管理により長期生存例が増えているが、理学療法(以下PT)に関する報告は少ない。今回、非侵襲的呼吸管理で退院調整中のCD児に発達支援を行ったので報告する。

【症例紹介】38週5日予定帝王切開、Apgar Score 6/7で出生しNICUに入室。出生時体重2,951 g、身長43cm。生後4か月にGCUへ転棟。1歳3か月現在、肺低形成、軟口蓋裂、扁平喉頭、舌後退、気管軟化のためNasal-CPAP、酸素2Lで24時間使用し、栄養は経管にて摂取、吸引を適宜要す。高度難聴、股関節脱臼、反張膝、足部変形を認める。体重4,990 g、身長58 cm、頭囲46 cm、胸囲34 cm、安静時心拍数130 bpm、呼吸数45 回/min、経皮的動脈血酸素飽和度100 %である。

【経過】生後2か月よりPTを開始。ポジショニングを中心に行なっていたが、自宅退院の方針に伴い1歳より介入頻度を週5回としPTプログラムを変更した。

 <1歳時評価>筋緊張は低く、未定頸。抗重力姿勢保持は困難。四肢を活発に動かし、動きが大きくなると反張膝が顕著になった。姿勢は背臥位が多く、座位保持装置は好まなかった。姿勢変換は困難。遊びは四肢を動かす、玩具を振って感覚を楽しむ。表出は笑顔もあるが、生理的欲求で泣くことが多かった。遠城寺式・乳幼児分析的発達検査は移動運動0~1か月、手の運動7~8か月、基本的習慣0~1か月、対人関係5~6か月、発語5~6か月、言語理解4~5か月であった。

 PTプログラムは、自発的な姿勢変換を促す目的に寝返り練習を行った。また、頚部・体幹の筋力強化を目的に頭部の重さを免荷した座位、腹臥位練習を行った。

 <3か月後評価>側臥位への寝返りとベッド柵を蹴りピボットターンにて姿勢変換が行えるようになった。姿勢は背臥位だけでなく側臥位をとることができ、座位保持装置にも1時間以上座れる日が増えた。遊びは操作性のある玩具やDVD鑑賞を楽しむようになった。音声が増え、泣く以外に喜怒の意思表示ができるようになった。遠城寺式・乳幼児分析的発達検査は移動運動1~2か月、手の運動8~9か月、対人関係6~7か月、発語8~9か月と変化を認めた。

【考察】本症例は疾患特有の大きな頭部や低緊張、肺低形成により、容易に呼吸状態が増悪する危険性がある。しかし、比較的呼吸状態が安定した時期に、バイタルや表情に注意しつつ積極的に介入したことで運動面・知的面の発達を促すことができたと考える。本人が安楽で受け入れやすい背臥位から介入を行なうことで姿勢変換が可能となり、頭部の重さを免荷した座位や腹臥位練習により頸部・体幹の筋力が向上し座位保持時間が延長したと考える。しかし、獲得した姿勢変換は膝関節を過伸展させる方法であり反張膝の増悪が懸念されるため、今後の対応を検討する必要があると考えている。

【倫理的配慮,説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき、患者本人とその保護者に対し、「症例報告の目的・公開方法・協力と取り消しの自由・人権擁護と個人情報の保護・発表者の連絡先・同意書の管理について」を書面で説明した。その後、保護者より書面にて発表を行う同意を得た。


出版年月日:
2019 , 
巻:
46 , 
号:
0 , 
ページ:
J-82_2-J-82_2 , 
ISSN:

超低出生体重児におけるNIDCAPの効果 第2報:-修正6か月と修正18か月での発達指数の群間比較- CiNiiでみる

著者名:
藤本 智久  皮居 達彦  田中 正道  石本 麻衣子  大谷 悠帆  久呉 真章  大城 昌平 

抄録:

【はじめに】我々は,2017年の第52回日本理学療法学術大会において,修正6か月でのNIDCAP(Newborn Individualized Developmental Care& Assessment Program)の効果について報告した.今回,NIDCAPの効果を修正6か月と修正18か月の発達指数について比較検討したので報告する.

【方法】2013年以降で出生,当院NICU,GCUに入院し,退院後,新版K式発達検査2001が実施できた超低出生体重児20名(平均出生体重 708.9±168.3g,男性7名,女性13名,在胎26.1±1.5週)である.そのうちNIDCAPの継続観察を実施した児(NIDCAP群)10名とNIDCAPの観察対象とならなかった児(Control群)10名に分けた.対象を外来で修正6ヶ月および18か月前後に発達検査を行い,姿勢運動(P-M)領域,認知適応(C-A)領域,言語社会(L-S)領域,全領域のそれぞれについて発達指数を算出し,NIDCAP群,Control群で比較検討した.なお,統計学的検討は, Mann-WhitneyのU検定を用いて危険率5%以下を統計学的有意とした.

【結果】NIDCAP群とControl群の修正6か月時の平均発達指数(NIDCAP群(n=10)/ Control群(n=10))は,P-M領域では,102.9/102.8,C-A領域では,104.9/105.1,L-S領域では,110.2/100.9,全領域では,104.7/104.3であり,L-S領域でのみ有意にNIDCAP群が高値を示した(p<0.05).また,修正18か月時の平均発達指数(NIDCAP群(n=6)/ Control群(n=10))は,P-M領域では,101.8/97.9,C-A領域では,100.5/98.6,L-S領域では,105.2/93.1,全領域では,101.8/97.5であり,全てで有意差は認めなかったがL-S領域でのみNIDCAP群が高値を示す傾向があった(p=0.07).

【考察】今回のNIDCAP群とControl群の発達指数の比較の結果, NIDCAP群が修正6か月の L-S領域で有意に高く,また,修正18か月でもL-S領域に高い傾向を認めた.これは,NIDCAPによって赤ちゃんの行動観察を根拠としてケアを行うことで,相互作用が促され,また退院後も家庭で母親が継続することより,赤ちゃんとのアイコンタクトやコミュニケーションが増え,退院後の言語社会面の発達につながっていた可能性も考えられる.今後は,症例数を増やし,他の要因との関係も含めて,詳細に検討していく必要があると考える.

【倫理的配慮,説明と同意】対象児の保護者には,NIDCAPおよび外来でのフォローアップについての説明および情報の取り扱いについて紙面および口頭にて説明し,同意を得て実施した.


出版年月日:
2019 , 
巻:
46 , 
号:
0 , 
ページ:
J-81_2-J-81_2 , 
ISSN:

脳性まひ児に対する外科的治療後のリハビリテーション:-多職種連携により食事動作が上達した1症例- CiNiiでみる

著者名:
笹川 古都音  宍戸 快  横井 恵巨  豊田 悦史  山地 純也  藤田 裕樹  房川 祐頼 

抄録:

【はじめに】 脳性まひ児のリハビリテーション目標においてADLの自立は必要不可欠であり、そのためには多職種連携が重要である。当院では多職種カンファレンスを行うため、月に一度「評価日」を設け連携を図っている。

 この度、下肢拘縮に対する外科的治療目的に入院した児に対し、保護者から入院中のリハビリテーションとして「数口でも自分で食べられるようになってほしい」と食事動作向上の要望が挙げられた。術後、「評価日」を通じ多職種で連携し、座位姿勢や食具のわずかな微調整を繰り返しながら食事動作練習を行った結果、短期間で改善に繋がった一症例を報告する。

【方法】 症例は脳性まひの診断を受けた6歳女児。痙直・アテトーゼ混合型四肢まひ、GMFCSレベルⅤ、MACSレベルⅣ、WISC-Ⅳ全検査58、言語理解78であった。食事は全身の筋緊張が高く姿勢保持困難なため、工房椅子を使用していた。嚥下機能に問題はなく、食事動作はセットすると数口、口へ運ぶことができる程度であり、ほぼ全介助だった。

 5歳6ヶ月時、股関節膝関節足関節周囲筋解離術目的に約6カ月間入院となった。リハビリテーションは術前評価から開始し、GMFMは25.2%、子どもの能力低下評価法(以下PEDI)におけるセルフケア領域「食器の使用」は1/5[点]であった。術後2ヶ月より、食具を使用した食事動作練習を開始し、評価日に合わせビデオ撮影を行った。

【結果】 術後4ヶ月時の食事動作は、スプーンで食べ物を救う動作が全介助、口に運び入れる動作は軽介助であった。伸筋共同運動パターン優位であり原始反射残存しているため、頭部を正中位保持した肘関節屈伸コントロールは難しかった。

 工房椅子の座面角度を調整したが、屈筋共同運動優位となり頭部が持ち上がらず、体幹側屈が増強した。座面角度の微調整に加え、体幹サポートの追加、テーブル・食具の再調整を行ったところ、頭部保持した肘関節屈伸コントロールが可能となり、上肢操作の介助量が減った。そこで気上での物作りや食事など、様々な場面において同じ環境で上肢動作が行えるよう、多職種にも座位設定や上肢の介助方法を周知した。児の作業意欲は更に向上し、上肢を使う機会が増加した。

術後5か月時の食事動作は、耐久性が乏しく、献立やモチベーションといった要因に左右されるものの、全般的に上達が認められた。退院時にはスプーンで食べ物をすくって口に入れるまで見守りで可能となり、GMFMは26.78%、PEDIセルフケア領域「食器の使用」は2/5[点]となった。

【考察】 術後は筋緊張が変化するため、運動パターンも変わる時期と考える。この時期に児の身体状況の変化に合わせ、より運動パターンを生かせる環境を設定し、さらに多職種で情報共有することで同じ環境下での食事動作を継続して行った。これらのことから短期間での食事動作の改善が得られたと考える。

【倫理的配慮,説明と同意】 本学会で発表するにあたり、症例の保護者に対し、個人が特定されるような情報は公開しないこと、発表にあたり新たに行う治療・評価はないこと、個人の不利益になることはないこと、同意後も撤回可能であることを書面にて説明し同意を得た。

 また、当院のリハビリテーション課の会議にて倫理的な問題はない旨の承認を得たうえで、学会発表の登録を行なった。なお、演題発表に関連し開示すべきCOI関係にある企業などはない。


出版年月日:
2019 , 
巻:
46 , 
号:
0 , 
ページ:
J-76_2-J-76_2 , 
ISSN:

幼少期にSDR・ITBを施行した学齢期アテトーゼ型脳性麻痺児に対して姿勢変換を中心に介入し、粗大運動能力が向上した一例 CiNiiでみる

著者名:
高木 秀明 

抄録:

【はじめに・目的】アテトーゼ型脳性麻痺児は,動揺性姿勢筋緊張や不随意運動を有し姿勢制御に困難性を有する.また,筋緊張は全身性のスパズムなどがみられる.それら筋緊張に対する治療として,選択的脊髄後根遮断術(以下:SDR)やバクロフェン髄腔内投与治療(以下:ITB)が選択されることがある.SDRやITBの単独治療後の症例に対する理学療法報告はみられるが,SDRとITBを併用している脳性麻痺児に対する理学療法報告は少ない.

今回,幼少期にSDR続いてITBを施行した学齢期アテトーゼ型脳性麻痺児に対して姿勢変換を中心に運動学習していくことで,粗大運動能力が向上した一例を経験したため報告する.

【方法】

症例:9歳男児 アテトーゼ型脳性麻痺.GMFCSレベルⅣ.在胎28週、1233gにて出生.2歳5か月時にSDRを施行,3歳時より下肢に対するボツリヌス毒素注射を施行.6歳2か月時にITBを開始.7歳1か月時より当院理学療法(以下:PT)に通院開始.

臨床像は,口頭でのコミュニケーション可能.下肢の知覚は曖昧で,筋収縮に伴う痛みの訴えが強い.音刺激や視覚変化,姿勢変換時に全身性のスパズムが目立ち,背臥位や側臥位,座位保持は困難.車椅子座位は胡座位のみ可能で,下肢を下した姿勢保持は困難.寝返り動作は不能.介助立位は,下肢が開排位となり困難.

PT介入:外来にて週1回40分の治療を24か月施行.介入から12か月は,床上での姿勢変換の中で,支持基底面となりうる部位への表在感覚,固有感覚情報を与えそれに対する感覚運動経験を促すように介入した.介入12~24か月は,座位・立位課題を通して,抗重力伸展活動を学習していくように介入した.

評価:当院PT介入当初と介入後12か月,介入後24か月で比較した.評価項目は,粗大運動能力尺度(以下:GMFM-88),姿勢・動作遂行時間・視診を用いた.

【結果】GMFM-88の変化は,総合点は2.6%から8.4%,8.6%へ向上(A項目:6%→29%→31%,B項目:7%→10%→10%,C項目:0%→2%→2%)し,ゴール総合点は6.5%から19.5%→20.5%と向上した.

姿勢・動作は,12か月後に背臥位での下肢伸展位保持が可能.背臥位から腹臥位への寝返り動作が可能となり,時折背臥位から腹臥位を経由し割座への姿勢変換が可能となった.また24か月後には,側臥位保持時間の延長(0秒→最長5分),車椅子座位では,下肢を下ろした座位が不能から20分となった.またSRC-Wを用いた立位では下肢を床方向へ下ろすことが可能となった.

【結論】今回,SDRとITBを施行したアテトーゼ脳性麻痺症例に対して,粗大運動能力向上を目的に姿勢変換などの自動運動をもとに感覚運動経験を積んでいくことで臥位・車いす座位レベルでの粗大運動能力の向上につながった.今後も継続的な支援を続け,獲得した能力を床座位や車いす座位,立位活動といった生活の中での課題につなげていけるように関わっていく.

【倫理的配慮,説明と同意】今回の発表に際して,倫理的配慮としてヘルシンキ宣言に基づき当事者及び保護者に船橋二和病院リハビリテーション科の規定に基づき,文書にて「報告の趣旨」と「目的」,「プライバシー保護」について説明し同意を得た.


出版年月日:
2019 , 
巻:
46 , 
号:
0 , 
ページ:
J-77_2-J-77_2 , 
ISSN:

乳児における臥位から座位への起き上がり動作分析 CiNiiでみる

著者名:
中野 尚子  藤澤 祐基  儀間 裕貴  渡辺 はま  多賀 厳太郎  小西 行郎 

抄録:

【はじめに】

乳児は生後7ヶ月頃になると臥位から座位へと起き上がるようになり、それまでの従重力位から抗重力位への姿勢変換が可能になる。座位を獲得することにより、児の目線は高くなり世界が広がり、両上肢は物を操作する道具として使用することが可能となるため座位獲得の意義は大きい。運動発達段階におけるバリエーションの変化は脳の発達を反映することが示唆されているが、乳児が臥位から起き上がり、座位獲得に至る連続的運動パターンを詳細に検討されたものは少ない。本研究では、乳児の座位への起き上がり動作パターンを詳細に観察・分析することにより、座位獲得に至る姿勢運動パターンの発達の基礎的研究とすることを目的とした。

【方法】対象は座位が可能になった月齢7ヶ月〜9ヶ月の15例(平均在胎週数39.2±1.5週、平均出生時体重2869.4±561.7g)であった。対象児をマットレス上に背臥位にし、母親の呼び掛けや対象児が関心を示す玩具などで起き上がり動作を促した。動作の記録にはデジタルムービーカメラ1台を用いた。対象児によっては起き上がり動作に対する動機づけが異なると考えられるため、撮影時間に関する条件付けは行わなかった。小児理学療法の臨床経験を有する評価者1名が動画を観察し、背臥位から座位に至る連続動作を自由記述した。得られた自由記述データをテキストマイニングソフトKH Corder(ver.3.Alpha.13g)を用いて分析した。

【結果】

自由記述データ全文を対象に形態素解析をした。抽出語の合計は1412語であった。出現頻度の多い用語をみると到達姿勢である座位(29回)に続き、骨盤(25回)、四つ這い(25回)、回旋(23回)、上肢(19回)、下肢(13回)、姿勢(13回)、伸展(13回)、支持(13回)が上位であった。続いて「座位」のキーワードがどのような文脈で出現しているかを類似度計算(Jaccard係数)による共起ネットワークを用いて示したところ、背臥位から座位に至る起き上がりに関わる文脈において、「座位」というキーワードに隣接する言葉は「骨盤」、「回旋」であった。

【考察】小児理学療法の臨床経験の長い理学療法士による自由記述文をテキストマイニング手法を用いて分析し乳児の起き上がり動作に関わる用語を抽出したところ、動作に関わる用語では「骨盤」「回旋」が特徴的なキーワードであった。理学療法士にとって姿勢運動パターンの観察・分析は、その専門性が発揮できる重要な分野であるが、一方で妥当性、正確性の課題も指摘されており、学生や若年のセラピストに対する教育的側面からも伝承が困難な分野の一つである。今後、今回得られたキーワードの精査を通して、出生時体重、月齢、起き上がり動作パターンとの関係を検証し、さらに低出生体重児における座位の発達との比較検討も行っていきたいと考える。

【倫理的配慮,説明と同意】本研究は東京大学ライフサイエンス委員会での審査を得て、ヘルシンキ条約に基づき研究を実施した。対象児の家族には疲労などの負担がある場合にはいつでも中断し即座に研究への参加が中止できることを事前に説明した。代諾者(保護者)に対する説明を行い、同意書への署名をもって研究参加への同意を得た。また、同意撤回書も手渡し、同意後も研究への協力を撤回できる旨の説明を行った。


出版年月日:
2019 , 
巻:
46 , 
号:
0 , 
ページ:
J-75_2-J-75_2 , 
ISSN:

成人期四肢麻痺症例の股関節・膝関節可動域制限に対するボトックスとCPMの併用効果について CiNiiでみる

著者名:
高嶋 美和  井上 明生  迫 洋平  迫 悦子  下川 真由美  坂本 一馬  田代 峻一  菊次 幸平  峯 知美  井上 紗也香 

抄録:

【はじめに】後天性の脳の器質的損傷では高度の痙縮と高度の関節可動域(ROM)制限を来たすことも多く,離床やADL上の介助負担が大きい症例を経験する.今回,ボトックスとContinuous passive motion(CPM)を併用して,股・膝関節のROM制限を改善させ,介助量の軽減に繋がった一例を経験したので報告する.

【症例紹介】30歳代男性.14歳時に落雷を受けて一時心肺停止状態になった後,四肢麻痺を発症し,当センターに入所した.入所当初から全身性の反り返り姿勢,上肢の屈筋群,下肢の伸筋群に高度の痙性を認め,Modified Ashworth Scale(MAS)は,肩関節屈曲,肘関節伸展,股関節屈曲,膝関節屈曲で左右ともに全て3 であった.ROM(以下,右/左,単位;°で記載)は,股関節屈曲45/45,膝関節屈曲20/20であり,離床は股関節を軽度屈曲した臥位姿勢のままギャッジアップした座位保持装置で行っていた.本人とご家族の主訴として,「身体を起こせるようになることで,今よりも楽に外出したい.」があり,できるだけ小回りのきく座位保持装置に乗りたいという希望があった.そこで,整形外科医師に相談し,痙縮に対してボトックスを注射し,股関節・膝関節のROMを改善する目的でCPMを併用した.2016年9月,12月,2017年4月に左右の大腿四頭筋・大殿筋へボトックスを筋注.2017年1月よりCPMを開始.CPMの角度設定は,当時の症例の膝関節可動角度より10°大きい角度から開始し,片脚1時間/日使用した.整形回診で股関節・膝関節ROMと痛みの自覚症状を確認し,設定角度を5~10°ずつ漸増した.2017年8月にはさらに脊柱起立筋へボトックスを筋注した.

【経過】初回ボトックス筋注後,下肢の抵抗感は減少した.3か月後の2回目のボトックス筋注とCPM開始後,膝関節屈曲は40/40まで改善.1年8か月後,MASの変化はみられないが,股関節屈曲は65/65まで改善し,膝関節屈曲は40/40を維持することができ,脚を持ち上げるときの抵抗感が軽減したことにより,更衣や移乗,入浴介助が楽になった.また,座位保持装置の股関節屈曲が可能になったことにより,外出時の移動が行いやすくなった.

【結論】発症後10年以上,治療の対象とされなかった成人四肢痙性麻痺例のROM改善は困難なことが多い.しかし,ボトックスによって痙縮の軽減をはかり,更にCPMを併用すると,股関節,膝関節は改善がみられることが分かった.

【倫理的配慮,説明と同意】今回の発表についてはその旨を本人とご家族に説明し同意を得た.


出版年月日:
2019 , 
巻:
46 , 
号:
0 , 
ページ:
J-77_1-J-77_1 , 
ISSN:

ハイハイ動作のバリエーション数変化に関する検討 CiNiiでみる

著者名:
李 瑛煕  松村 海  山本 晨平  鶴崎 俊哉 

抄録:

【背景】乳幼児の中枢神経系は, 1~3歳における脳内での莫大なシナプス形成後,必要な神経回路が選択され総数が減少していく過程を伴って発達していくとされている(神経細胞群選択説)。我々は,乳幼児の運動バリーションが中枢神経系の発達を反映して変化するのではないかと考え,ずり這い・四つ這い・(高這い)と質が変化するハイハイ動作に注目した。これまでに運動バリエーションを客観的に捉える方法としてコード化によるハイハイ動作分析基準を考案し,その信頼性を検証してきた(参照http://www2.am.nagasaki-u.ac.jp/ptd/tsurusaki/b63f6goh/5.html)。今回,この分析基準を使用してハイハイ動作の経時的変化を独歩に至るまで検討したので報告する。

【対象と方法】神経学的・整形外科学的に問題のない乳幼児12名のハイハイ動作をIPカメラ6台用いて前後左右と上方から撮影した(撮影間隔1~2週間)。撮影期間は,研究参加への同意が得られてから独歩獲得までとした。撮影した動画は,ハイハイ動作分析基準を使用した経験のある1名がすべてコード化した。対象ごとにⅠ)ハイハイのパターンと上肢の使い方, Ⅱ)頭部の位置と動き, Ⅲ)体幹の動き, Ⅳ)下肢の使い方, のコード種類をハイハイ動作10サイクルあたりの数に換算してバリエーション数とし, 個体内での日齢による推移をグラフ化した。撮影期間中のグラフの変曲点(傾きの正負の変化)数と各時点でのコード内容の比較・検討や, 四つ這いを主移動動作としている期間との関連性を検討した。

【結果】分析基準の各大項目変曲点数を撮影10回あたりに換算し, 12名での平均値を出したところⅠ)2.7±1.1 回, Ⅱ)4.9±1.8回, Ⅲ)5.2±1.2回, Ⅳ)4.7±1.3回となった。撮影期間の日齢数平均は151.50±26.24日であり, 平均撮影回数は11.2±2.7回であった。また, 各大項目のコードの種類は同乳幼児内でも日齢を追うごとに異なる種類のものが出現している例が複数例見受けられた。

【考察】変曲点数で表現されるバリエーション数の増減は, 運動学習の過程を反映していると思われる。大項目のうち, ハイハイの種類と上肢の使い方に関してバリエーション数の増減が他の大項目と比較して少なかったことから, 重心にもっとも影響のでやすい頭部を支えるための上肢動作の早期確立(安定性)がまずなる。その後, 頭部・体幹・下肢の使い方等を個人の身体条件や目的にあわせて動作を模索・選択するといった過程があり, それがバリエーション数増減の回数に反映していると考えた。また, 上記に加えて日齢を追うごとに, 過去に出現したコード(動作分析基準に基づいて評価した数字の並び)に加えて新たなコードが複数出現してバリエーション数増減が成されている例が複数見受けられたことから, ハイハイ動作を獲得する運動学習の過程において複数回にわたる試行錯誤の経験が起こり得ることが示唆された。

【倫理的配慮,説明と同意】当研究を行うにあたり乳幼児の親権者から同意を得て行っている。

リスク管理としては, 平時のハイハイ動作を撮影しているため危険性は極めて低いと思われる。また, 撮影した動画はパスワードを付けて保護し個人情報は匿名化して取り扱っている。

なお,本研究は長崎大学大学院医歯薬学総合研究科倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号18061431)。


出版年月日:
2019 , 
巻:
46 , 
号:
0 , 
ページ:
J-74_2-J-74_2 , 
ISSN:

自発運動の出現と、介助量軽減が家族を後押しし、自宅外泊につながった一例 CiNiiでみる

著者名:
馬場 新太郎 

抄録:

【はじめに】

 重症心身障害児者施設入所中の超重症幼児への抗重力姿勢を目指した取り組みの結果、頭部・眼球運動の出現と姿勢適応の改善が家族に意思疎通や介助に希望を与え、初めての自宅外泊に至った。経過を考察し報告する。

【症例紹介】

 5歳xか月女児。痙直型四肢麻痺。超重症児(気管切開、夜間人工呼吸器、人工肛門)。生後8か月時に腹臥位で窒息し低酸素性虚血性脳症となった。2歳xか月の入所時、股関節外転・外旋、膝過伸展、下腿外捻、肩外転・外旋、手関節掌屈位で、呼びかけなどの音刺激や介助時の接触および重心移動に全身過緊張となった。この過緊張はときに投薬による鎮静も必要で、四肢は可動性に乏しく、過外転した下肢は骨折歴もあり、移乗介助は三人を要した。目が閉眼することは稀で、眼球は上転していることが多かった。家族は毎日面会に来ていたが、児の意思の汲み取り難さや介助リスクから外出は困難と思われていた。多職種協働の共通支援目標は、病棟生活の中で安全に移乗や介助を受け入れられることであった。理学療法では全身の筋緊張の調整を図り、重心移動・姿勢変換への適応性を改善すること、目と手と頭部で意思を表すことができることを目標とした。

【経過】

 半年後には体幹の筋活動が高まり背面筋の過緊張が軽減、瞼・眼球も下方に下りやすくなった。殿筋群・大腿筋膜張筋の過緊張が軽減し、内転可動域が改善、移乗介助は三人から二人になった。股関節の可動性拡大に伴い、半側臥位の導入を目的に積極的な側臥位での治療を展開、股関節外側、肩甲帯での支持が促せるようになった。

 入所から1年、側臥位に適応しやすくなり、左右半側臥位と軽度股関節屈曲の姿勢設定を導入。セラピィでは抱っこで抗重力伸展活動と頭部のコントロールが促せるようになった。次第に頭部・眼球の分離した運動が出現、家族の声かけに頭部や眼球を声の方向へと動かすようになった。股関節内転は右-40度から10度、左は-35度から-5度へと改善し、股関節屈曲は腰椎屈曲・骨盤の後傾を伴うが30度まで可能となり、介助への適応は改善した。家族からは自宅への外泊の希望があがり、1泊2日の外泊を計画、成功に至った。

【考察】

 今村(2001)は、「入所者の帰省回数は入所5年後に有意に減少していた」と述べている。施設生活で家庭とのつながりが薄れやすい環境のなか、本例は入所時からの積極的なセラピィにより、呼びかけに対して頭部・眼球運動が出現するようになった。玄(2011)は「親を認識しているような動きや様子は親としての存在を確かめることにつながる」と述べており、親子の関係性を強化したと考えた。そして、変形の改善と姿勢適応の向上は介助負担とともに家族の不安も軽減、外泊への希望につながったと考えた。今回、自宅で家族と過ごした時間は児と家族にとって大きな経験となり、これからの生活がより豊かなものへと広がることを期待している。

【倫理的配慮,説明と同意】

本発表は当センターの倫理委員会の承認及び家族への説明と同意を得ている。

また開示すべき利益相反(COI)はない。


出版年月日:
2019 , 
巻:
46 , 
号:
0 , 
ページ:
J-76_1-J-76_1 , 
ISSN:

幼児の全身関節弛緩性 CiNiiでみる

著者名:
髙橋 恵里  小野 治子  新田 收 

抄録:

【はじめに,目的】全身関節弛緩(General Joint Laxity;以下,GJL)は,年齢および性別,人種から予想される正常な可動域よりも大きな可動性がみられる身体的な特徴である。GJLは男性より女性で発症率が高く,幼児期から学童期からみられ,成長とともに発生率が減少する。また,ヨーロッパより東アジアで発症率が高いなどの人種差がある。GJLは,発達障害児にみられる発達性協調運動障害との関連性に加えて,就学以降のスポーツ障害との関連が報告されており,我が国の定型発達幼児のGJLについて知る必要があるがその報告は少ない。そこで,本研究の目的は,我が国における定型発達幼児のGJL発症率を明らかにすることとした。

【方法】対象は,保育所・幼稚園で募集された5,6歳の日本人の幼児72名(男児39名,平均月齢±標準偏差:70.2か月±6.3)であった。明らかな運動障害や知的障害を有する者は対象から除外した。測定項目はBeighton Score(以下,BS)とした。BSは,国際的に最も使用されているGJLの評価指標である。測定項目の陽性基準は,両母指が前腕掌面に接触する,両小指のMP 関節が90°以上伸展する,両肘関節が10°以上伸展する,両膝関節が10°以上伸展する,立位体前屈したとき手掌全体が床につく,とした。各項目が陽性であった場合は1点とし,9点中4点以上をGJL有と分類した。統計学的検討は,SPSS Statistics 22(IBM)を用いて実施し,有意水準は5%とした。

【結果】25名34.7%がGJL有と分類された。このうち,BS 4点9名(12.5%),5点8 名(11.1%),6点4名(5.6%),7点4名(5.6%)であった。BS合計点に性差(p=0.218)や月齢との相関(r=0.050)はみられなかった。両膝伸展の合計点(p=0.036)と立位体前屈(p=0.009)において,女児の点数が有意に高かった。

【結論】本研究により,5,6歳の日本人幼児において34.7%がGJLであることが示された。これは,イタリアやオーストラリアの発症率よりも高かった。また,BS合計点には性差がなかったものの,下肢と脊柱において性差があることが示された。

【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,東北福祉大学研究倫理委員会の承認を受けて実施した(承認番号RS170705)。対象児の所属施設長に対し,ヘルシンキ宣言をもとに対象者の保護と権利の優先,参加・中止の自由,研究目的と内容,身体への影響を口頭および書面にて説明し,書面にて同意を得た。同時に,対象児の保護者に対し,同様の内容を書面にて説明し,書面にて同意を得た上で実施した。


出版年月日:
2019 , 
巻:
46 , 
号:
0 , 
ページ:
J-75_1-J-75_1 , 
ISSN:

非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍患児に対する理学療法経験 CiNiiでみる

著者名:
陽川 沙季  瓦井 義広  﨑田 博之  脇田 媛加  田村 太資 

抄録:

【はじめに】

 非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍(AT/RT)は胎児性脳腫瘍の一つで悪性度は高く予後不良とされている。今回AT/RT患児の理学療法を経験したので報告する。

【症例紹介】

 3歳女児。出生歴、発育歴は問題なし。診断名はAT/RT、閉塞性水頭症。歩行時のふらつき、嘔吐があり、近医受診し、MRIにて後頭蓋窩腫瘍、水頭症を指摘。当センター転院後、同日脳室ドレナージ術施行。入院8日目に開頭腫瘍摘出術が施行され一部腫瘍を摘出。病理診断の結果AT/RTと診断される。入院23日目より化学療法開始し、入院142日目から188日目まで放射線療法を追加。入院275日目に自家末梢血幹細胞移植を施行された。

【経過】

理学療法は、入院31日目より開始した。初回評価時は清潔隔離中で安静度はベッド上。表出は声かけに対し頷きのみであった。側臥位までの寝返りは自立、その他は全介助であった。痙性は認めないが、上肢は運動時に振戦を認めた。介助での起き上がりでは、体幹の動揺が著明であった。理学療法は清潔隔離中のため、全身状態に注意しながらベッド上での介助座位から開始した。化学療法による腫瘍の縮小に伴い徐々に身体機能の改善を認めた。しかし化学療法中や移植後は嘔吐、倦怠感、腹痛等による活動量や栄養状態の低下があり、骨髄抑制中は安静度の制限もあった。また姿勢保持、動作時の動揺は恐怖心に繋がった。理学療法はモチベーションを維持しながら、活動量、動作能力の向上を目標に実施した。毎回児、母と状態に合わせた目標を立て、清潔隔離中はベッド上にて可能な範囲での座位を実施し、理学療法室に出棟可能な時は、お店やおままごとを設定し座位や立位場面をつくった。介助歩行が可能になれば、お買い物ごっこで短距離から歩行も行った。病棟ではバギー移乗、手をつないで病棟内歩行、院内のコンビニへと活動量を拡大した。更に歯みがきは洗面台まで行く、更衣もできる範囲は自身で行うように促し、児が達成感を得られるようにした。退院前のMRIで腫瘍の残存や再発はなく、入院316日目に寛解退院した。退院時には運動時の上肢振戦は軽減し、座位は安定したが、立位、歩行での動揺は残存していた。移動は屋内手つなぎ歩行が主で、独歩は1m可能だったが、易疲労性あり短距離でも抱っこを求めていた。保育園への復帰を目標に、退院後も外来理学療法を継続し、退院後5か月で自宅内移動は独歩自立、屋外でも短距離独歩を獲得し、保育園復帰した。

【考察】

本症例においては、遊びの中で楽しみながら理学療法を実施したことで、治療時期ごとの副作用や低栄養状態、更には動作時の動揺による恐怖心がある中でもモチベーションの向上が可能であったと考える。併せて、理学療法時間以外にも、母が清潔隔離中は座位での遊びを促したり、手つなぎ歩行で積極的に院内での歩行場面をつくったりと、児の体調に合わせて関われたことが、更なる活動量、動作能力の向上に繋がったと考える。

【倫理的配慮,説明と同意】

ヘルシンキ宣言に基づき、患児の保護者に発表の主旨を説明し、同意を得た。


出版年月日:
2019 , 
巻:
46 , 
号:
0 , 
ページ:
J-73_2-J-73_2 , 
ISSN:

脳性麻痺児の移動能力は歩行能力評価尺度でどのくらい評価できるのか CiNiiでみる

著者名:
樋室 伸顕  西部 寿人 

抄録:

【はじめに、目的】脳性麻痺児・者の移動能力低下は、身体活動量低下や参加制約などの原因となる。移動能力への理学療法介入の評価では歩行能力評価尺度が多く用いられる。歩行のcapacityを評価する歩行機能評価法と、日常生活上のperformanceを評価する歩行遂行能力評価法があるが、それらで移動能力をどのくらい評価できるのか明らかでない。本研究は、脳性麻痺児の移動能力と歩行能力評価尺度の関係を検証することを目的とした。

【方法】Gross Motor Function Classification SystemレベルI、II、IIIの歩行可能な脳性麻痺児71人(男47人、女24人、平均年齢12.6歳)を対象とした。移動能力は日本語版Fuctional Mobility Scale(FMS)を用いて家の中(5m)、学校(50m)、地域(500m)の3つの距離で評価した。歩行機能評価法として1分間歩行テストとTimed Up and Goテスト(TUG)、歩行遂行能力を日本語版ABILOCO-Kidsで評価した。FMSの移動能力によって歩行能力評価尺度に違いがあるのかKruskal-Wallisの検定、その後の検定としてDunnの方法で3つの距離ごとに検証した。さらにFMSと歩行能力評価尺度の関係を多項ロジスティック回帰分析で3つの距離それぞれで検証した。目的変数をFMSのスコア、説明変数をモデル1では歩行機能評価(1分間歩行テストとTUG)、モデル2ではモデル1+歩行遂行能力評価(ABILOCO-Kids)とした。モデルの選択規準として赤池情報量規準、モデルの適合度の指標としてCox & SnellのR2値、NagelkerkeのR2値、McFaddenのR2値を用いた。

【結果】FMSの移動能力によって、すべての歩行能力評価尺度に有意な違いが見られた。1分間歩行テストは独歩と車椅子の間、TUGは独歩と杖歩行の間と独歩と車椅子の間、ABILOCO-Kidsはどんな床面でも独歩可能とやや困難だが独歩可能の間、独歩と杖歩行、独歩と車椅子の間で有意差が見られた。多項ロジスティック回帰分析ではFMS5mでは準完全分離が見られたが、FMS50m、500mの距離において、モデル1、モデル2の順に赤池情報量規準は小さい値となり、モデルの適合度はモデル1では28%〜62%、モデル2では42%〜75%であった。

【結論】1分間歩行テスト、TUG、ABILOCO-Kidsは脳性麻痺児の移動能力の違いを評価できることがわかった。さらにこれらを組み合わせることで移動能力をより詳細に評価できた。移動能力の評価は、歩行機能の評価だけでなく、歩行遂行能力の評価と組み合わせて行うことが必要である。

【倫理的配慮,説明と同意】本研究は、当該施設倫理審査委員会の承諾を得て実施した。対象者と保護者には研究説明書を用いて研究目的・方法、研究参加棄権で不利益を受けないこと、個人情報の保護等について説明を行い、同意書の署名をもって研究参加の承諾とした。


出版年月日:
2019 , 
巻:
46 , 
号:
0 , 
ページ:
J-72_1-J-72_1 , 
ISSN:

脳性麻痺児の実用的独歩獲得に影響を与える機能障害因子の同定:-多施設横断的研究- CiNiiでみる

著者名:
藪中 良彦  朝貝 芳美  近藤 和泉  中 徹 

抄録:

【はじめに】

研究の目的は,10歩以上の独歩が可能であるが日常生活場面で実用的独歩が困難な脳性麻痺児と実用的独歩が可能な脳性麻痺児の機能障害レベルおよび動作レベルの因子を比較し,実用的独歩に影響する因子を明らかにすることであった.なおこの研究は,科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金 挑戦的萌芽研究 課題番号 26560292)の研究費で実施された.

【方法】

対象児は,8歳から19歳の痙直型両麻痺脳性麻痺児(GMFCSレベルⅡ~Ⅲ)で,室内で10歩独歩できる者であった. 実用的歩行レベルを,①室内の50%以上を四つ這いで移動する,②室内及び屋外平地移動時に50%以上独歩を行うが,壁などに手をつく必要がある時がある,③室内及び屋外平地移動時に,壁などに手をつくことなく独歩で移動できる,の3つに分類した.対象児6名(各歩行レベル2名)に対するパイロット研究によって明らかになった実用的歩行獲得に影響している可能性が高い因子である筋力(股関節伸筋,膝関節屈筋,足関節底屈筋), SCALE[下肢の選択的運動コントロール評価法](足関節,距骨下関節),片脚立位能力,後方歩き能力のデータを,国内11施設の痙直型両麻痺脳性麻痺児70名(平均年齢13歳11ヶ月±3歳3ヶ月,8歳0ヶ月~19歳6ヶ月,男性39名,女性31名,平均体重41.0kg±12.1kg,GMFCSレベルⅡ 51名,Ⅲ 19名,実用的歩行レベル①10名,②29名,③31名)より収集した.統計学的解析には,IBM SPSS Statistics 23を使用した.

【結果】

股関節伸筋筋力は実用歩行レベル①と③の間(p<0.001)及びレベル②と③の間(p<0.001)に,膝関節屈筋筋力はレベル①と③の間(p<0.001)及びレベル②と③の間(p<0.001)に,足関節底屈筋力はレベル①と③の間(p<0.020)に有意差があった(一元配置分散分析).足関節SCALE(p<0.013),片脚立位(p<0.001),後歩き(p<0.001)において,実用的歩行レベル3群の中に違いがあることが明らかになり,実用的歩行レベルが高いほど足関節SCALE,片脚立位,後歩きの得点が高かった.距骨下関節SCALEはp=0.061で傾向は示されたが,有意差は示されなかった(Kruskal-Wallis検定).筋力(股関節伸展筋,膝関節屈筋,足関節底屈筋)を独立変数として,多重ロジスティック分析を実施した結果,膝関節屈曲筋力が実用的歩行レベル②と③の違いに影響を与えていることが示唆された.膝関節屈曲筋力による実用的歩行レベル②と③の判別の的中率は,80.8%であった.

【考察】

実用的歩行レベルに最も影響している因子は膝関節屈筋の筋力であったが,膝関節屈筋の筋力が強いことで直接的に実用的独歩機能が向上するとは考えにくい.膝関節屈筋の筋力が発揮しやすいことは,下肢の選択的運動コントロール能力が高いことを表し,その結果として独歩機能が高くなっていると考える.

【倫理的配慮,説明と同意】

大阪保健医療大学研究倫理委員会からの承認(承認番号:大保大研倫1703)を得て研究を実施した.データ提供を受けた対象者には,データの使用を拒否できる機会を保障するために,その方法を記載した書面を渡し説明を行った.また,開示すべき利益相反(COI)はない.


出版年月日:
2019 , 
巻:
46 , 
号:
0 , 
ページ:
J-72_2-J-72_2 , 
ISSN:

足底知覚の改善によって歩容の改善がみられた低酸素脳症の一症例 CiNiiでみる

著者名:
早川 政孝  石川 雄基  加藤 寛聡  鵜野 友佳  加藤 さき  安井 隆光  小柳 翔太郎 

抄録:

【はじめに,目的】

近年,足底知覚が立位姿勢制御や歩行の改善に寄与することが報告されている。今回,足底知覚の変質がみられた症例に対して足底での表面素材の識別課題を実施した結果,足底知覚が改善し,歩容の改善につながった一例について報告する。

【方法】

症例は低酸素脳症と診断された10歳4ヶ月の男児。生後9ヶ月にて歩行を獲得した後,1歳4ヶ月時のRSウイルス感染を契機に低酸素性虚血性脳症を呈し,四肢及び体幹の不全麻痺を認めた。3歳頃に歩行を再獲得し,屋内では裸足,屋外ではsupra-malleolar orthosisを装着して歩行していた。しかし,足元に注意が向きづらく,段差や障害物に躓き転倒することがあった。また,日常会話は可能だが,歩行の様子について語ることができず,言語教示によって歩容を修正できなかった。初期評価時のPediatric Evaluation of Disability Inventory(PEDI)の機能的スキルにおける移動領域の尺度化スコアは62.9であり,「やや不整な路面(ひびの入った舗道)」での屋外移動や,「30〜50m移動する」ことが困難であった。歩容の特徴としてクリアランスの低さや上肢のハイガードがみられた。足底の触圧覚は,触れられているかどうかを識別できる程度であった。足底知覚は,足底を9箇所(母趾,小趾,母趾球,小趾球,前足部後方の左右,中足部の左右,踵)に区分し,ポインティング(セラピストは児に閉眼させた後,9箇所のいずれかに触れる。その後児は開眼し,足底を見ながら触れられた箇所を指差す。これを各箇所1回ずつ行う)の正答数にて評価した。左右ともに9箇所中1箇所(踵部)のみ識別が可能であった。以上から,足底知覚が変質している為,歩行時に床面の傾きや硬さを知覚できず,歩容に異常が生じていると仮説を立てた。介入は,足底知覚の改善を目的に,足底の触覚を利用した表面素材の識別課題を,1回60分,隔週1回の頻度で実施した。課題は,素材の異なる3枚のジョイントマットを提示し,アイマスクを装着させた後,提示したマットのうちいずれか1枚に足底で触れさせ,どのマットであるか答えてもらうものであった。

【結果】

介入4カ月後の足底知覚の評価では,右足底は9箇所中5箇所(踵部および足底内側の箇所),左足底は9箇所中8箇所(小趾球以外の箇所)の識別が可能となった。歩行時には足部への注視が増え,上肢はミドルガードとなり,クリアランスが高くなった。PEDIの機能的スキルにおける移動領域の尺度化スコアは65.0となり,「やや不整な路面(ひびの入った舗道)」での屋外移動や「30〜50m移動する」ことが可能になった。

【結論】

今回,足底知覚の変質がみられ,歩容に異常が生じた低酸素脳症の症例に対し,足底の触覚を利用した表面素材の識別課題を実施した結果,ポインティングにおいて識別可能な範囲が拡大し,より不整な路面における歩行の安定性の向上がみられた。今回の結果は足底知覚の改善が歩容の改善につながったと考えられた。

【倫理的配慮,説明と同意】

本発表にあたり,発表内容と趣旨についてご家族に口頭にて説明し同意を得た。個人情報の保護とデータの取り扱いについては,ヘルシンキ宣言に基づき,十分に配慮した。


出版年月日:
2019 , 
巻:
46 , 
号:
0 , 
ページ:
J-74_1-J-74_1 , 
ISSN: